お知らせ
2020年1月7日(火)に基本合意10年の集会が開催されました。
全国から400人が、滋賀からは元原告2人を含む12人が参加されました。
当日の様子は「障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会」ホームページよりご覧いただけます。
https://www.normanet.ne.jp/~ictjd/suit/
全国集会アピール
2010年1月7日、私たち障害者自立支援法違憲訴訟原告・弁護団は、国と「基本合意文書」を結び、自立支援法に代わる新たな法律をつくるためのスタートを切りました。
過半数を障害当事者が占めた障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が取りまとめた骨格提言には、障害者福祉の新たな考え方がぎっしりと詰め込まれ、原告はもとより、全国の障害のある人に大きな期待と希望を抱かせました。
しかし、その「骨格提言」は生かされませんでした。「看板のすげ替え」と揶揄されたように、自立支援法の本質が残ったままの障害者総合支援法が誕生してしまいました。私たちは言いようのないショックに見舞われました。そんな中で、はっきりと芽生えてきたのは「負けられない」という気持ちでした。あの違憲訴訟を起こしたときの想いが蘇ってきたのです。そして、これまでに増して、「基本合意を完全に実現しよう」の想いが募っていきました。
基本合意に則って、厚労省との定期協議はほぼ毎年開催されています。そのたびに、基本合意の精神と内容を確認し、障害者総合支援法がもたらすさまざまな問題点を取り上げ、制度の改善を訴えてきました。ただし、厚労省の対応は冷たく、毎回のようにもどかしさや虚しさは晴れることがありません。貴重な定期協議をもっと実のあるものにしていかなければなりません。
さて、基本合意が結ばれてから、10年の歳月が流れました。もし、基本合意文書がなかったとしたらどうなっていたでしょう。おそらくあの「応益負担」はもっと幅を効かせていたに違いありません。定期協議もなかったでしょう。岡山市での「浅田訴訟」など、各地の新たな裁判にも勇気を与えてくれています。
一方で、いまだに65歳からの「介護保険優先原則」は変わらず、自立支援医療の「応益負担」は続き、事業所の経営を苦しめる報酬の日払い制度も残ったままです。また、新たな給付減と負担増が見込まれる「全世代型社会保障改革」の動きなども心配です。そう見ていくと、現状は、基本合意の完全実現とはほど遠いと言わざるを得ません。
基本合意が結ばれた以降の大きな出来事として、障害者権利条約の批准があげられます。この権利条約は、基本合意文書の完全実現に大きな力になってくれます。これからは、基本合意と権利条約を一体化してとらえていくことが重要です。
新しい年の始まりとともに、本日ここに自立支援法違憲訴訟原告・弁護団・基本合意の完全実現をめざす会、そして私たちの活動を応援してくれるみなさんと一堂に会し、新たな道のりの一歩を踏み出すことができることを、とてもうれしく思います。道半ばで亡くなられた7人の仲間の無念さを胸に刻み、これまで通り「ひとかたまり」を大切にしながら、基本合意の完全実現をめざしてがんばっていきましょう。
2020年1月7日 基本合意10年全国集会参加者一同
きょうされんは結成以来、障害福祉についての制度拡充を求めるため、この【国会請願署名・募金運動】にとりくんでいます。常に障害のある人たちの立場に立ちながら、制度化を訴えてきたこの署名運動は、今年で43年目となります。障害があっても…「あたりまえに働き えらべるくらしを」を実現させるために、署名と募金へのご協力よろしくお願いします。
■請願趣旨
現在すすめられている「全世代型社会保障改革」では、社会保障における給付と負担の見直しが検討されており、国民にさらなる負担が強いられることで、憲法25条で保障された生存権がますます脅かされつつあります。
障害福祉においては、ここ数年、成果主義が強められ、就労系事業所では平均工賃の高い事業所がより多くの報酬を受け取る等、生産性や目に見える成果のみを評価した報酬体系となりました。また、雇用施策と福祉施策が分断されていることにより、通勤支援が受けられない等、障害のある人たちの就労の機会が奪われ続けています。
さらに、1996年まで続いた優生保護法により、被害者は尊厳を踏みにじられてきたにも関わらず、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」は、その人権回復には程遠い内容であるとともに、国の責任を全く明らかにしていません。
障害者権利条約に掲げられた、障害のある人が障害のない人と同等に生きることのできる社会を実現するためには、日本の障害福祉関連予算を、せめてOECDの平均並みに引き上げることは、欠かすことのできない優先課題です。
以上をふまえ、次の項目について請願します。
■請願項目
1.「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」は、国の謝罪を明記し、支給額を見直すなど、被害者の人権回復にふさわしい法律としてください。
2.障害年金を安心して生活できる水準まで引き上げるとともに、グループホームやヘルパー制度など希望する暮らしを支える制度を拡充してください。
3.「2021年度の報酬改定」では、必要な職員を確保して充分な支援ができるよう、基本報酬を引き上げてください。
4.障害のある人が65歳を超えても必要とする支援を自ら選んで利用できるよう、介護保険優先原則を廃止してください。
5.地域活動支援センターが安定して運営できるよう、国の責任で実態を調査し、制度を拡充してください。
署名用紙等は下記URLよりダウンロードいただけます。
https://www.kyosaren.or.jp/motion/9912/
4月24日に「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が成立しました。
被害者の人権回復には程遠く、不十分なはありますが、それでも被害者の方がひとりでも多く一時金を請求してほしいという願いで、きょうされんは新しいパンフレットを作りました。
■「わたしも子どもをもちたかった ~ 一時金を請求しましょう!」パンフレットは下記URLよりご覧いただけます。
https://www.kyosaren.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/638bb6afaf390f0b1899d3b40bc3f535.pdf
きょうされん・消費税増税に関する声明(PDFファイル).pdf (0.1MB)
きょうされん・消費税増税に関する声明【ルビ付き】(PDFファイル).pdf (0.11MB)
消費税の10%への増税は障害のある人の社会参加を阻み、
障害者権利条約の実現を困難にする
2019年9月6日
きょうされん常任理事会
消費税増税の影響と不安
10月からの消費税増税が迫り、障害のある人の中で不安がひろがっています。きょうされんが2016年に発表した調査では、作業所などで働く障害のある人のうち相対的貧困といわれる年収122万円以下の人が81.6%、さらに年収200万円以下のワーキングプアといわれる人の割合にいたっては98.1%にのぼりました。また、今年4月に障害基礎年金が引き上げられましたが、その伸びはマクロ経済スライドというしくみのために物価の上昇分よりも低く抑えられています。このように、ただでさえ収入が少ない障害のある人にとって、消費税が2%も上がることは大きな負担となります。
また、障害のある人が働く作業所でも負担が増えます。きょうされんが昨年実施した報酬改定の影響調査では、就労継続支援B型事業所や就労移行支援事業所の約6割で減収となりました。そこに消費税増税がのしかかるわけですから、障害のある人の働く場はますます困難な経営を余儀なくされます。とくにB型事業所では、高工賃を実現しなければ報酬が少なくなるというように成果主義が強化されましたから、障害の重い人が働く場から敬遠されるなどの影響が懸念されます。
消費税は公平な税金か
政府は、消費税が働く世代など特定の者に負担が集中しない公平な税制だから、社会保障の財源としてふさわしいといいますが、本当にそうでしょうか。
社会保障の重要な役割は、収入の多い人ほどたくさん払う応能負担の原則で税金を集め、これを財源として収入が低い人にも最低限の生活を保障することです。こうすることで格差が小さくなり、必要な福祉や医療、教育などが国民に届くのです。
しかし、消費税は収入の多い人にも少ない人にも同じ負担を求めます。そうなると、例えば年収1000万円の人は一定額を貯蓄し、残りを消費に回すことができますから、年収の中の消費税の割合は比較的小さくてすむでしょう。しかし年収120万円の人は、そのほとんどを消費に回さないと生活できませんから、年収の中の消費税の割合は高くならざるを得ません。その結果、実質的には年収の少ない人ほど負担が大きくなるのです。
さらに、消費税を社会保障の財源にするのは、障害者自立支援法違憲訴訟で問題になった利用料における応益負担と似ています。福祉など社会保障の給付を受けるのだから、その財源は収入の多い人も少ない人も定率で負担しなさいというわけで、実質的な公平とは程遠いのです。消費税は社会保障の財源として、最もふさわしくない税金だといえるでしょう。
「社会保障の財源として消費税増税が必要」は事実か
また、消費税導入以来、日本の社会保障は財源が確保されて拡充してきたでしょうか。実際には、生活保護や医療、年金などすべての分野で削減が続いています。障害福祉においては、確かに予算は増額してきましたが、もともとの出発点が低かったために、まだ先進諸国の平均にも至っていません。
消費税は3%から8%まで増税されてきたのに、なぜ社会保障は拡充されないのでしょうか。消費税の税収を見ると、導入された1989年度は3.3兆円だったのに対し、2016年度は17.2兆円と、大幅に増えています。一方、同じ時期の法人税は19兆円から10.3兆円へ、所得税は21.4兆円から17.6兆円へと減っているのです。つまり、大企業の法人税や、高額所得者の所得税を減らし、その分を消費税で埋めているに過ぎず、社会保障には回っていないのです。
今回の消費税増税という「ムチ」に対して、年金の上乗せや幼児教育の無償化、そして障害分野で10月から導入される新たな処遇改善などの「アメ」も用意されていますが、これらの施策は消費税しか財源がないという一方的な宣伝の下で提案されています。消費税増税ではなく、法人税や所得税を応能負担にふさわしい税率に戻すことや、右肩上がりの防衛費を見直すことなどで、財源は確保できるのではないでしょうか。
以上のことから、きょうされんは10月からの消費税増税に反対します。百歩ゆずって、仮に利用できる支援のメニューが増えたとしても、消費税増税分をその財源に充てるということは、障害のある人にとっては使えるお金が減るので、社会参加の機会をひかえざるを得なくなります。これでは、障害のある人が他の者との平等にもとづいて地域で生活を送ることを求める障害者権利条約の理念とは真逆ではありませんか。
この条約の実施状況に関する日本の審査が来年夏に予定される中、わたしたちはこの動きを既定のものとして見過ごすことはできません。また、多くの報道がこうした消費税の負の影響を伝えることなく、増税を前提とした対応のあり方に集中していることにも苦言を呈したいと思います。