お知らせ

2025-11-07 17:24:00

「2026年度滋賀県予算に関わる障害福祉施策に関する要望」を提出

2025年11月7日に「2026年度滋賀県予算に関わる障害福祉施策に関する要望」を提出しました。

pdf 2026年度県要望書(25.11.7提出).pdf (0.82MB)

 

 

2025117

滋賀県知事

三日月 大造 様

きょうされん滋賀支部 

理事長 田村 和宏

 

2026(令和8)年度滋賀県予算に関わる障害福祉施策に関する要望

 

向寒の候、貴殿におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

平素は障害福祉向上のためにご尽力賜り、誠にありがとうございます。

今年は被爆・戦後80年です。きょうされんでは 「障害のある人と戦争を考える~人権と平和」をテーマに様々な活動に取り組んでいます。先月開催された第48回きょうされん全国大会(奈良大会)では、被爆された方との交流やきょうされん広島支部、長崎支部の障害当事者によるシンポジウムを通じて、核兵器は人類の生存と幸福に重大な影響を及ぼすことを共有し、核兵器の廃絶と平和を希求することの大切さを確認しました。ウクライナやガザで多くの尊い命が危機にさらされていることは看過できません。そして、能登半島地震をはじめ、世界的に自然災害や異常気象が増大しています。ひとたび災害が起これば甚大な被害をもたらし、とりわけ障害のある人への影響はより深刻です。私たちは、平時から命や人権を大切にする社会を望みます。

 今、障害のある人を支援する事業所は、危機的な人手不足に陥っています。それは働く職員の労働環境の悪化にとどまらず、急速かつ大幅な物価高とも相まって、障害のある人の生活や生存までも危うくしています。最低賃金は上がりましたが、その元となる障害福祉サービス事業所の報酬は減るばかりです。賃金を抑えざるを得ないことが、職員を確保できない最大の要因となっています。人材確保と定着支援が今ほど求められることはないでしょう。

 滋賀県では、「滋賀県障害者差別のない共生社会づくり条例」の見直しや新しい滋賀県障害者プラン(第8期障害福祉計画)の策定議論が始まります。私たちの要望についてもぜひ反映いただきたいと思います。

つきましては、以下を要望するとともに、要望に対する回答ならびに関係各課との懇談の場を設けていただきますよう、お願い申し上げます。

 

 

要望項目として

1、旧優生保護法問題の完全解決をめざして

旧優生保護法最高裁勝利判決から1年、その後の「補償法」の成立・施行から半年以上が経過しましたが、「補償法」の認定は13(令和78月現在)にすぎません。県に現存する名簿のある方への個別通知の進捗状況をお聞かせください。また、中絶を含むすべての被害者への周知について、その対応をお聞かせください。さらに、声をあげられずにいる被害者や被害を受けたことすら知らされていない方のため、民間施設の徹底した調査とそのための予算を計上してください。

県のホームページに829日付けで、こども家庭庁のチラシや動画をアップされていますが、「優生保護法問題の全面解決をめざす全国連絡会(優生連)」の当事者が呼びかける動画(21)もアクセスできるようにしてください。

旧優生保護法についての県職員への研修の機会は、どのようにお考えですか。愛知県では、県立高等学校教員の研究会で、優生保護法裁判の原告を招き人権教育が行われています。先行事例として参考にしてください。

 

 

2、ハラスメントの根絶に向けて

本年6月13日に外部の有識者の意見を踏まえて「社会福祉法人グローにおける性暴力・ハラスメント事案に係る県の対応の振り返りを踏まえた今後の対応について」が公表されましたが、そもそも県の対応が遅れた理由をお聞かせください。また、被害にあわれた方に北岡元理事長が直接謝罪するように、社会福祉法人グローに求めてください。

 県職員へのハラスメントに対する研修実施の有無と、成果を教えてください。

 社会福祉法人グローでは、理事・監事や評議員会の体制が変わりましたがその成果を明らかにしてください。また、他の社会福祉法人や障害福祉サービスを運営するものに対するハラスメント対策の研修計画は、各圏域の事業所に委託されているようですが、国際基準の研修計画はどの程度進んでいるのか教えてください。

 

 

3、障害のある人の3分野(「働く・日中活動」「暮らし・住まい」「文化・社会参加」)の充実について

■「働く・日中活動」

①養護学校進路指導部の実態調査では、2025年度以降に重心タイプ・医療的ケア、車イス対応の卒業生が全県的に増えます。看護師配置、喀痰吸引のできる人の配置、建物、設備、入浴機具などを備えた生活介護事業所が不足しています。

重度障害のある人のグループホーム建設の県単制度が創設されたように、重心タイプ・医療的ケア.車イス対応の人や強度行動障害タイプなど特別に支援が必要な人の生活介護事業所創設のために、県単独制度として開設補助金の創設をしてください。また、空き公共施設や空き店舗などを利用した生活介護事業所創設のための改修費補助金も創設してください。

■「暮らし・住まい」

②強度行動障害など支援度の多い利用者のグループホーム入居について

ここ数年、株式会社設立のグループホーム(日中サービス型)や県外社会福祉法人のグループホーム建設が進み、グループホームの利用定員は増加していますが、一方で、行動障害など支援の多い人のグループホーム入居が課題となっており、市町調査を行いました。 その結果、区分4以上で行動点数10点以上の強度行動障害のある人の圧倒的多くは自宅(17市町で729)で暮らしていることが分かりました。また、強度行動障害のある人の県内の入所施設とグループホームの入居者合計は828人です。更に県内入所施設(409)と県内グループホーム(419)とほぼ同数となり、県の「これ以上入所施設を創らず地域で共に暮らす」という方針の下では、ますます地域のグループホームの建設が必要です。70%の市町が県単独のグループホーム整備事業に効果があるとし、82%の市町で、令和9年度以降の事業継続を望んでいます。

県単独の重度障害者のためのグループホーム整備補助金事業は、大変有効です。令和9(2027)年度以降も継続・充実してください。

また、国に対して、グループホームの暮らし=少人数の暮らしを確保するために、少人数ほど建設補助額が多くなる施策設計を提案してください。例えば、4人~6人の小規模グループホームには補助金を高く、7人~10人規模のグループホーム補助金は少なくする傾斜配分方式などを提案してください。

 

■「文化・社会参加」

③障害当事者の文化・社会参加の充実について

障害のある人の社会参加や余暇活動(特に土・日・祝日の活動参加)は、グループホーム入居者も在宅の利用者も行動援護や重度訪問介護などに限られており、その機会は大変少ない状態です。在宅の利用者にとっては、家族の精神的負担・経済的負担は大変大きいものがあります。

県として土・日・祝日の社会参加の場所の確保を行ってください。

滋賀県の公共交通機関が発展していない地域実情を踏まえ、各市町の移動支援や社会参加の実態調査をしていただき、例えば、移動支援の「上限月30時間」制限の緩和等を働きかけてください。国に対しては市町と共に、移動支援を裁量的経費から個別給付にするように要望してください。

また、日中一時支援事業は、その目的が「介護者のレスパイト・就労支援」です。一方で、利用者の地域生活における過ごしの場や交流の場としての役割もあります。一人暮らし、ホーム入居者、現行の日中一時支援事業の目的に合致しない方の受け皿としての施策を創設してください。

 

 

4、「65歳問題」について

県は、「国の通知や事務連絡において、65歳で介護保険を一律に適用せず、本人の希望で適切な運用が図れるよう、市町に周知、運用の確認を行っていきます。」(昨年の回答)としていますが、県内の一部自治体では、介護保険優先対応の実態があります。これまで以上に、障害者の生活状況に配慮して、必要に応じて障害福祉サービスの継続を認め、安心してサービスを選択利用できるよう、市町に対して県からの必要な助言を徹底してください。

また、市民税非課税世帯には介護保険の利用料が無料になるよう働きかけてください。

 

 

5、福祉人材確保について

きょうされん滋賀支部会員の人材確保の実態調査を行ったところ74事業所から回答がありました。そのうち人材が不足している事業所は50事業所(68%)に上り、不足人数の総数は124人にも上りました。事業種別にみると入所施設やグループホームは23事業所のうち、16事業所(70%)で54名の不足が分かりました。実に1事業所あたり3.4人の不足です。日中事業所は43事業所中、26事業所(60%)で56人が不足(1事業所あたり2.2人)しています。相談・居宅事業所では8事業所すべてが人手不足と回答し、14人の不足となります。全職員の年齢構成をみると、入所施設とグループホームの総職員数327人中60代以上が200人(61%)です。(日中事業所は総職員数682人中60代以上が162人(24%)です。)

どの事業所も人材不足は顕著ですが、特に入所施設やグループホームでは今後さらに深刻化が進むことが十分推察できます。 

 県として、この状況を十分に把握していただき、人材確保策・定着策を検討してください。まず、エッセンシャルワークの労働の位置づけの重要性について様々な機会で強調していただくことと、人材確保策について、「緊急人材確保奨励金(仮称)」として、入職後半年たった場合には、年収の1割を奨励金として法人に支給する等の支援策を検討してください。

 

 処遇改善加算についての調査も行いました。加算を取得している事業所が多く、加算が職員の手当てや賞与に繋がっていることは確かです。加算によって「職員確保、離職防止、モチベーションの向上に繋がる」と回答した事業所もあります。ところが、「影響がなかった」という事業所も4割ありました。事業所はその申請、実績報告等の実務に膨大な労力を有します。最低賃金は上がりましたが、その元となる障害福祉サービス事業所の報酬は減るばかりで、パート職員が欠かせないほとんどの事業所では多額の人件費支出となります。また、相談支援員には加算が提供されず法人負担で対応している現状です。それでも職員の給与は今般の物価高騰に追い付いていません。

そこで、下記の3点を県から国に求めてください。

①全産業と遜色しない処遇水準に向けた報酬の大幅な引き上げと早急な実施。

②報酬への賃金スライド制・物価スライド制の導入。

③処遇改善の制度間一元化、対象事業・職種と法人裁量のさらなる拡大

 

 

6、令和6年度報酬改定の影響調査について

昨年度の報酬改定では、就労支援事業所への成果主義、基本報酬の削減と人員配置加算での対応等、グループホームの軽度者排除などの報酬体系となり、とりわけ放課後デイサービスや生活介護で時間単位が導入されました。時間単位の導入は、介護保険制度に直結していくのではないかと大変危惧しています。きょうされんとしては、この時間単位が定着する前に、様々な団体と連携して、時間単位の報酬制度の廃止を求めています。

そこで、県として、今回の報酬改定の影響調査を行ってください。

生活介護の時間単位導入には、県内のいくつかの当事者・家族を含む障害者団体でも危惧していると聞いています。県としてもぜひ国に対して時間単位の報酬改定を廃止するよう要望してください。また、「財政制度等審議会」は就労継続B型の収益が多く、時間割の検討を求めています。そうなれば事業所が利用者をより一層選択する可能性も否定できません。障害のある人に働く場が保障されるよう就労継続B型への時間単位導入を行わないよう、国に提言してください。

 

 

7、物価高騰による利用者工賃や事業所運営に対する要望

電気・ガス等物価高による支援策について、市町による格差が出ています。県として交付金や特別の補助金を創設して、利用者の工賃補填や事業所への補助をお願いします。

 

 

8、その他の国への要望

大雪の対策について(県北部と南部の地域格差の是正)県としても調査して、市町と連携して補助策を検討してください。

 

 

以上