お知らせ
障害者雇用水増し(偽装)問題を徹底検証し、
真の障害者雇用の前進を
2018年8月29日
きょうされん常任理事会
8月17日以来、中央官庁での障害者雇用水増し(偽装)問題が連日報道されているが、障害のない職員を障害があるとみなす、あるいは新たな障害のある人は任用しないといった実態が次々明らかになり、当会としては憤りを禁じえない。8月28日、本件に関する調査結果が公表されたことを受け、当会は現時点の声明を示すこととした。
① 失墜した行政への信頼
「あきれて物が言えない」「こんな差別的な出来事に直面するとは思わなかった」当会会員からもこうした声があがっており、行政の信頼は完全に失墜した。障害者雇用の水増し(偽装)は27の省庁で行われ、しかも1976年に身体障害者の雇用が民間企業に義務付けられたことを受け障害者の雇用状況が公表された1977年以来42年間続くという。
国の行政機関の実雇用率は公表されていた2.49%ではなく、その半分以下の1.19%だった。1977年当時の民間企業の雇用率が1.09%だから、歴史は振り出しに戻ったことになり、民間企業の障害者雇用にも冷水を浴びせかねない。また結果の発表まで2カ月を要したにもかかわらず、2016年以前の任免状況については公表されず、全貌は見えない。水増し(偽装)の実態を過去に遡って明らかにするべきである。
② 「制度の理解が不十分であり、意図的なものではない」は通用しない
本件のポイントは、障害者雇用義務制度の対象範囲が法令で定められているにもかかわらず、行政機関が対象外の人をカウントしていたことにある。そのため障害者雇用促進法第38条に基づく障害のある職員の数が雇用率を満たさない場合に作成すべき採用計画や、同法第40条に基づく任免の状況に関する厚生労働大臣への通報は、事実と異なるものだった。長年にわたるこうした行為は、法令に従う義務を規定した国家公務員法第98条や、信用失墜行為の禁止を規定した同法第99条とも相容れない。
各省庁等は「制度の理解が不十分であり、意図的なものではない」としているが、重要なのは意図的であったかどうかを超えて、これによって障害のある人が深刻な事態に直面したという結果である。このような言い逃れで、障害のある人と国民が納得するはずがない。
③ 本件は行政による人権侵害である
本件によって働く機会を奪われた障害のある人たちは、収入面でも大きな不利益を被ったわけだが、何より社会参加の選択肢を行政により制限され、重大な人権侵害を受けたことになる。これだけの数の行政機関が長年にわたり同様の水増し(偽装)をした背景には、「障害のある人は手がかかる」「障害のある人を任用すると人手もお金も余計にかかる」といった偏見や無理解があるのではないだろうか。
障害者雇用の先頭に立つべき行政機関の中にある、こうした根深く古い意識が社会的障壁となって、障害のある人に合理的配慮や必要な支援を講じることを妨げ、障害者権利条約や関連法令を形骸化させている。
④ 徹底検証と真の障害者雇用の前進を
政府は障害のある人たちの無念や怒りに真摯に耳を傾け、徹底検証の出発点として欲しい。この検証に当たっては、行政機関を監視する観点から国会の役割にも期待したい。そして障害のある人の参画のもとで、本件のような取り扱いが長年にわたり繰り返されてきた原因やその手法、歴代担当者による引継ぎの在り方等について明らかにする必要がある。
障害のある人もない人も共に生きる社会をつくるために、政府は障害者権利条約を批准したはずであり、これは私たちも共有する目標だ。その達成に向かうために、政府はもちろん国会も含めて本件と真剣に向き合い、公務部門で働く障害のある人を量的に拡大するとともに、その働く条件と環境の整備に、必要な予算の確保も含めて不退転の覚悟で取り組まなければならない。
【声明】障害者雇用水増し(偽装)問題を徹底検証し、真の障害者雇用の前進を.pdf (0.15MB)