お知らせ
2018年度の障害福祉サービス等報酬改定についての見解
2018年2月16日
きょうされん常任理事会
2月5日の報酬改定検討チームにおいて、2018年度の障害福祉サービス等報酬改定案が示され、今後、パブリックコメントを経て4月から報酬改定が実施される。今回の改定は、昨年5月および11月の財政制度等審議会による建議が求めた財政抑制路線を具体化したものであり、障害のある人の労働や生活に安心と安定をもたらすとはいい難い。以下、改定案の特徴を概観する。
まず一点目は成果主義のさらなる強化だ。従来から基本報酬を定めたうえで、事業所の成果によって加算を加える方式をとっていたが、今回は基本報酬までも成果によってランク付けしている。特に顕著なのが、就労継続支援B型事業の基本報酬を平均工賃によって7段階に分けた点だ。工賃が高いほど自立した地域生活につながることや、生産活動の支援に労力を要することを評価するというが、改定案では平均工賃の高い事業所でも減収が見込まれる場合もある。
また、高い工賃をめざすことは重要だが、これを報酬で評価することは適切ではない。稼得能力に制約を受けやすい障害の重い人の否定や排除につながることになるだろう。障害の重い人の中には「わたしがいるから報酬を押し下げているのでは」と肩身の狭さを感じる人が出るに違いない。経営者の中には、「工賃を稼げそうな人を優先して採用しよう」といった心理が働くことも想定される。障害のある人の就労支援が大きくゆがむことになろう。一人ひとりが選ぶ働き方で生計を立てることをめざす障害者権利条約の理念からも程遠い。
二点目は我が事・丸ごと地域共生社会の具体化が始まっている点だ。その第一歩である共生型サービスでは、障害福祉事業所が介護保険事業所の指定を受けることで、65歳を過ぎた利用者が引き続き同じ事業所を利用できることから、あたかも65歳問題が解消されるかのように描かれている。しかし65歳を過ぎた利用者の行先は、それまでと同じ事業所であっても介護保険の指定を受けた共生型事業所なので、報酬や利用者負担等は介護保険の制度に移っている。従って本人が障害福祉か介護保険かを選択したくても、強制的に介護保険に移されることが懸念される。この点で、共生型サービスは、障害福祉と介護保険の垣根を低くし、現場レベルで両制度をつなげることで、近い将来の一元化への布石の役割を果たしていると見ることができる。
三点目は、営利本位で障害のある人の権利をかえりみない事業者の参入を制限する手立てが講じられていない点だ。例えば今回創設された日中サービス支援型共同生活援助には、比較的高い報酬が設定された。こうした報酬に注目して、この分野に参入する事業者が増えることで、昨今の就労継続支援A型事業での大量解雇という、あってはならない深刻な事態がふたたびくり返されることは許されない。
今回の報酬改定の検討過程では前回同様、財政難を理由として、新たな要望をする場合には既存のしくみのどこを削減するかを合わせて提案することが障害者団体側に求められた。しかし、日本の障害分野への予算配分はOECD諸国の平均値にも満たないという事実を踏まえるべきだろう。先進国にふさわしい予算配分を計画的段階的に実現することの経済効果等も検討する必要があるのではないか。
以上見てきたように、今回の報酬改定はさまざまな課題をはらんでいる。障害のある人までも短絡的な成果主義・競争原理にさらされることは必至であり、事業所においても厳しい運営を強いられることだろう。きょうされんはその影響を早期に把握し、障害のある人の地域生活を好転させる観点から、問題提起をしたい。
2018年度の障害福祉サービス等報酬改定についての見解.pdf (0.16MB)