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2017-04-11 18:30:00

精神保健福祉法改正案に反対する意見

2017年4月10日 きょうされん

 政府は2017年2月28日、「相模原市の障害者支援施設での殺傷事件の再発防止」を改正趣旨に掲げた「精神保健福祉法改正案」(以下、改正案)を閣議決定し、国会上程しました。改正案には、措置入院患者の退院後の支援体制や精神障害者支援地域協議会の設置が謳われています。
 きょうされんは、厚生労働省内に設置された「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止検討チーム」において、再発防止策として措置入院制度の見直しが進められていくことや、社会防衛策の強化につながることを強く懸念していました。
 残念ながら、改正案は精神障害のある人への権利擁護を進めるのではなく、時計の針を逆戻りさせるような社会防衛的な方向にあることを指摘し、以下に意見を述べたいと思います。

1.前提の変わった改正案は撤回すべき
 改正案が閣議決定される4日前、2月24日に横浜地方検察庁は精神鑑定などを踏まえ、容疑者を「完全責任能力がある者」として起訴しました。被疑者は「自己愛性パーソナリティー障害」と鑑定されており、必ずしも措置入院が必要とは言えません。
 しかし、改正案についての議論は、被疑者が「措置入院の必要な者」であることを前提にしています。前提が変わったのであれば、当然ながら改正案は撤回すべきです。

2.社会防衛的な方向性への危惧
 誤った前提にもとづく「改正」は様々な問題や矛盾をもたらす可能性があります。例えば、改正案に示されている精神障害者支援地域協議会もその一つです。同協議会については、警察官の参加が明記される一方で、個別ケース検討会議への本人や家族の参加は「必要に応じて」とされ、当事者の立場が軽視されています。さらに退院後も医療の管理下に置かれることが危惧され、精神障害のある人への偏見や社会防衛的な政策の増長につながります。

3.精神科医療の改革こそが求められる
 厚生労働省は、精神科医療において隔離や身体拘束が増えていることを発表しました。病気の治療のために入院したはずが、施錠された部屋で過ごしたり、ベッドにくくり付けられることで、患者自身にどのような影響を与えるのか、はかり知れません。こうした状況を引き起こしてしまう大きな要因に、他の診療科と比べて医師も看護師も少なくてよいとする、いわゆる「精神科特例」の問題があります。
 また、昨今示されている「重度かつ慢性」の基準も問題です。「重度かつ慢性」とされた人は地域移行の対象からはずされ、地域生活の機会が奪われます。この「重度かつ慢性」の基準を廃止し、地域生活を実現していくという方向性に切り替えるべきです。
 今の日本に求められていることは、措置入院制度の見直しではなく、精神科医療の抜本的な改革、すなわち社会的入院の解消や、精神障害のある人への権利擁護の仕組みづくり等です。
今般の改正案には、こうした抜本改革の視点は全くありません。それどころか、少しずつ動き出した「病院から地域へ」という流れに冷や水を浴びせる以外の何物でもなく、廃案とすべきです。