お知らせ
2016-08-11 11:41:00
【第二次声明】障害者入所施設で起きた殺傷事件について
~すべての人の命と権利が大切にされる社会を~
2016年8月10日 きょうされん常任理事会
7月26日未明に神奈川県相模原市の知的障害者入所支援事業津久井やまゆり園で起きた殺人事件について、あらためて犠牲となったみなさんに哀悼の意を表します。また、心身ともに深く傷つかれたみなさんの一日も早い回復を心から願います。
事件は、抵抗する術のない重度の障害のある人を標的にした大量殺人であり、どんな理由をもってしてもその蛮行を許すことはできません。逮捕された容疑者は「障害者がいなくなればいいと思った」などと供述しているとされており、何よりも容疑者自身について、その動機や背景など真相究明を徹底して行なうことが必要です。同時に、今なお同園で生活されているみなさんへの配慮や心身のケアに、国や自治体が最善を尽くすことを求めます。
さらに政府には、事件の真相究明と合わせて、津久井やまゆり園の利用者をはじめ全国の障害のある人に向けて、どのような障害があってもすべての人の生命と人権は平等であり、何にも増して大切にされなければならないことを表明するとともに、社会に向けても発信されるよう強く要望します。そのことは、障害のある人をはじめ多くの人びとに安心を与えることになるはずです。
事件後の7月26日、厚生労働省は「社会福祉施設等における入所者等の安全の確保について」とする通知を自治体に発出し、日中及び夜間における施設の管理・防犯・緊急時の対応体制、警察等関係機関や地域住民などとの協力・連携の強化などを促しました。さらに、8月10日に「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」を、措置入院制度のあり方を含め事件の検証と再発防止策等を検討するとして医師や有識者等の構成により発足させました。事件全体像の把握が不十分な中で拙速な結論を急ぐことがあってはなりません。防犯上の対策は必要ですが、事件の背景を深く掘り下げる必要があります。
今般の事件からは、第二次世界大戦時に優生思想のもとドイツのヒトラー政権下で行なわれた障害者の大量虐殺「T4作戦」を想起せざるを得ません。容疑者が障害のある人を「劣った存在」として排除する特異な思想をもつにいたった背景等を深く分析し、その上で政策上に不備や盲点がなかったのかどうか、冷静で厳正な検証を求めます。
2006年施行の障害者自立支援法(現、障害者総合支援法)のもと、職員の非正規化と報酬抑制による労働条件等の低下が進み、現場は悲鳴をあげています。市場原理の導入を含め、こうした土壌が事件とは無関係なのか、深い検討が必要です。さらに、容疑者に措置入院歴があったことを根拠に強制入院制度を強化する等、差別と偏見を増幅させるような社会防衛策の強化へと安易に走らないよう求めます。
障害者差別解消法や障害者虐待防止法は施行されていますが、虐待はなくなっていません。今回の事件の犠牲者の氏名が公表されていない事態も、社会の偏見や差別と無関係ではありません。わが国は障害者権利条約を2014年1月に批准しましたが、このような状況を鑑みれば、条約を根づかせる上で、課題が多いことを認識せざるを得ません。
障害のある人びとや家族のみなさん、わが国は憲法ですべての人の基本的人権の尊重を謳っています。今般の事件に萎縮することなく顔を上げ、いつも通りの生活を送りましょう。支援者のみなさん、障害のある人への支援は誇りある仕事です。今回の蛮行にひるむことなく、障害のある人や家族のみなさんにしっかり寄り添い、個々に配慮した特別な支援体制をとっていきましょう。
そして市民のみなさん、障害の有無や軽重に関わらず人の命と人権は平等で尊いものであることに思いを馳せてください。互いの人格を尊重しあう社会に向けて、ともに手を取り合って歩んでいただくことを心から呼びかけます。
きょうされんは、すべての人びとの命と人権が尊ばれる社会に向けていっそう努力していきます。
付記:きょうされんは、7月26日付で「【声明】障害者入所施設で起こった悲惨な事件について」を発表しています。あわせてご覧ください。また、この第2次声明の「わかりやすい版」を発表していますので、必要な方に紹介してください。