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2018-10-24 13:55:00

 

22日に出された、国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会報告書を受けてきょうされん常任理事会にて声明を発表しましたのでお知らせいたします。

 

【声明】

障害のある人が働くことを支える仕組みを抜本的に見直す機会に

~国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会報告書を受けて~

 

20181024

きょうされん常任理事会

 

 障害者雇用の水増し(偽装)を受け、1022日に国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会(以下、委員会)が報告書を発表した。同日、公務部門における障害者雇用に関する基本方針(案)(1023日に決定、以下、基本方針)も公表された。

 それによると、死亡した人や退職者を算定する、うつ状態や不安障害を身体障害者として算定する等、常識では考えられない手法がとられていたという。国の行政機関によるこうした常軌を逸した法令違反に、改めて強く抗議する。

こうした事態を解消するには徹底検証が不可欠だが、報告書はその水準とは程遠い。更に検証すべき点や今後のとりくみ等について、当会の見解を述べる。

 

検証から見直しに到る一連の過程が拙速であること

 委員会の報告書とこれを踏まえた基本方針が同時に公表されたわけだが、これでは検証自体が結論ありきだったのではないかと疑わざるを得ない。

 加えて長年の水増し(偽装)を徹底検証するには、2ヵ月という委員会の期間は余りに短く、実際に過去に遡っての精緻な検証にはなっていない。報告書では「対象障害者として計上される根拠となった確認資料は引継がれないまま、その名簿のみが引き継がれ」といった実務慣行の弊害を指摘するにとどまり、実際の確認方法は不明のままだ。関係資料を全面開示するとともに過去の担当者等からも聞き取る等、本件の経緯を明らかにするために、再検証を行なうべきだ。

 また基本方針では2019年末までに雇用率を達成するとあるが、非常勤雇用でお茶を濁すことにはならないだろうか。短期間の大量採用で職場に大きな負荷がかかり、その弊害が障害のある人に向かうことも危惧される。障害のある人が働くための合理的配慮等の措置を講じることや、職員への障害に関する啓発等がなければ、新たな数合わせに終始するのは必至だ。今求められるのは拙速な障害者雇用の拡大ではなく、一定の年限の下で合理的配慮の提供や職場の環境整備等を進めるための、予算確保の見通しを伴った行程表を策定し、障害のある人の労働及び雇用政策の基礎を打ち固めることである。

 

障害者雇用の水増し(偽装)の背景を直視していないこと

 今般の水増し(偽装)の背景には、「障害のある人は手がかかる」「障害のある人を任用すると人手もお金も余計にかかる」といった偏見や無理解がある。こうした根深く古い意識が社会的障壁となって、水増し(偽装)という形で障害のある人を排除し続けてきたのだ。

 委員会はいずれの行政機関も意図的に不適切な対応をした例は把握していないとしているが、意図的だったかどうかを調査しないまま、今回の事案は悪質な虚偽行為ではなく不適切な計上だったとしている。2014年に独立行政法人労働者健康福祉機構で同様の事案が発覚した際には、虚偽報告として関係者が罰金の略式命令を受けているが、4年前も今回も、障害のある人に起きた出来事は、働く機会を奪われ、尊厳を傷つけられたという結果においてはまったく変わらない。「意図的ではなかった」と繰り返す各省庁にはこの結果の重大性への認識が欠落しており、その背景に、根深く古い偏見や無理解があることを直視し対策を講じるべきだが、報告書にはこうした観点の検証は見当たらない。

 

障害者権利条約等の実現と当事者参加の実質化を

 今回の事態により障害者雇用促進法が施行された1960年以来、障害者雇用に係る基礎データが誤っていたことになる。これを機に、障害のある人の範囲や雇用率におけるダブルカウント、特例子会社のあり方等かねてから指摘されている課題を正確なデータに基づいて検証する必要がある。さらに、行政機関への納付金に類する仕組みや任用状況の監視システム等の導入等、再発防止策も速やかに講じるべきだ。

 こうした見直しの指標となるのが障害者権利条約やILO159号条約等の国際規範だが、報告書にはこれらへの言及は一切ない。障害のある人もない人も分け隔てなく共に生きる社会をめざす障害者権利条約の観点等を実現する立場で、障害のある人が働くことを支える仕組みを見直す機会とするべきだ。

 また、同条約では政策決定過程への当事者参加が強調されているが、障害のある人は委員会に含まれず、基本方針の策定にも参加していない。障害団体からヒアリングをしたから、あるいは労働政策審議会障害者雇用部会でも審議したから良しとするのではなく、委員会を始め関連するあらゆる会議体に委員として障害のある人が実質的に参加することが求められる。

 

 以上が当会の見解である。1024日(水)から始まる臨時国会でこの問題が深められることを期待するとともに、そのために当会としても関係団体と連携しながら力を尽くす所存である。

 

 

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